住環境医学研究会

Japanese Society of Indoor Environment and Health

 医学部会

 

2004年10月11日

シックハウス症候群の定義(笹川2001)のVer3改訂


 
 最近、シックハウス症候群の概念・定義をめぐって、従来の狭義解釈から広義解釈へと変わってきましたが、この機会にWHOや欧米に準拠(シックビルデイング症候群)するのがよいと考え、シックハウス症候群の定義(笹川2001)をVer3に改訂しました。


住環境医学会研究会副会長
大阪皮膚科医会副会長医師 笹川征雄

 
■シックハウス症候群の定義と診断基準(笹川 2001)

 2001年当時、シックハウス症候群をどのように判断し、診断するのかという明確な学術指標がほとんどなく、医学的、社会的な混乱の基になっていた。

 シックハウス症候群を室内空気質の問題として位置付け、シックハウス症候群の定義を「室内空気汚染による健康障害である」とし、診断基準を発表した。室内空気汚染物質は、(1)ホルムアルデヒド・揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds.VOCs)、(2)粒子状物質、(3)その他のガス成分、(4)ラドン、などである(広義)。

 これまで日本政府の解釈は「建築物に起因するVOCsによる健康障害」であるとし、主な原因を化学物質によるものと考えてきた(狭義)。
 
この日本独自の解釈は、シックハウス症候群の原因がホルムアルデヒド(VOCs)を中心に社会問題化したことと、シックハウス症候群の用語が日本で造語されたことによる。筆者の広義の定義は、WHOや欧米でのシックビルデイング症候群の概念に沿ったものである。



■シックハウス症候群の定義(笹川 2001)改定Ver,3

 シックハウス症候群の概念はWHOや欧米の考えに準拠するのがよいと考え、シックハウス症候群の定義を「住環境による健康障害」と改定した。
 住環境による健康障害は、2つの危険要因(risk factors)があると考え、(1)室内空気質(Indoor Air Quality :IAQ)、(2)それ以外の住環境要因、とした。


A.室内空気質の危険要因
(1)物理的要因(温度、湿度、換気、繊維、アスベスト、環境放射線:ラドンなど)、(2)化学的要因(@VOC、ホルムアルデヒド、臭気、Aその他のガス成分)、(3)生物学的要因

B.それ以外の住環境危険要因
(1)物理的要因(音、騒音・振動、照明、建築学的設計)、(2)化学的要因(農薬・殺虫剤)、(3)心理的要因
 IAQを主要な危険因子としたのは、シックビルデイング症候群の歴史的な経緯と、欧米ではIAQは別格扱いで研究されており、人体への影響が大きいことを重視したことによる。室内空気汚染物質(Indoor Air Pollutants)は、一時的な汚染ではなく、常時、あるいは長時間に渡り室内空気を汚染する、ガス状物質、粒子状物質(粒径10μm以下)、浮遊微生物のことを指す。

 

 

シックハウス症候群の定義(笹川 2001)Ver3

  
 定義 住環境による健康障害である。


 参考事項 住環境(居住)による健康障害は、室内空気質と、それ以外の要因(物理的、心理的)による。
 

 
【室内空気質の危険要因】

1.物理的要因
 温度、湿度、換気、繊維、アスベスト、ラドン
2.化学的要因
 揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド
  (1)住宅建築の関連物質(木材、合板、内装材、接着剤、防腐剤、防蟻剤) 
  (2)生活空間内の関連物質(家具・調度品、生活用品、業務用事務機器、職業性化学物質、臭気) 
 その他のガス成分
  (1)物質の燃焼時(一酸化炭素、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物)
  (2)生活起因物質(メタノール、オゾン)
3.生物学的要因
真菌、ダニ類、細菌、花粉、ペット


【その他の住環境危険要因】

1.物理的要因
 温度、湿度、換気、音、騒音・振動、照明、建築学的設計
2.化学的要因
 農薬(室内植物用)
3.心理学的要因
 ストレス、仕事

  
英文表記
 
  
 
 

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