■シックハウス症候群の定義と診断基準(笹川 2001)
2001年当時、シックハウス症候群をどのように判断し、診断するのかという明確な学術指標がほとんどなく、医学的、社会的な混乱の基になっていた。
シックハウス症候群を室内空気質の問題として位置付け、シックハウス症候群の定義を「室内空気汚染による健康障害である」とし、診断基準を発表した。室内空気汚染物質は、(1)ホルムアルデヒド・揮発性有機化合物(Volatile
Organic Compounds.VOCs)、(2)粒子状物質、(3)その他のガス成分、(4)ラドン、などである(広義)。
これまで日本政府の解釈は「建築物に起因するVOCsによる健康障害」であるとし、主な原因を化学物質によるものと考えてきた(狭義)。
この日本独自の解釈は、シックハウス症候群の原因がホルムアルデヒド(VOCs)を中心に社会問題化したことと、シックハウス症候群の用語が日本で造語されたことによる。筆者の広義の定義は、WHOや欧米でのシックビルデイング症候群の概念に沿ったものである。
■シックハウス症候群の定義(笹川 2001)改定Ver,3
シックハウス症候群の概念はWHOや欧米の考えに準拠するのがよいと考え、シックハウス症候群の定義を「住環境による健康障害」と改定した。
住環境による健康障害は、2つの危険要因(risk factors)があると考え、(1)室内空気質(Indoor Air Quality :IAQ)、(2)それ以外の住環境要因、とした。
A.室内空気質の危険要因
(1)物理的要因(温度、湿度、換気、繊維、アスベスト、環境放射線:ラドンなど)、(2)化学的要因(@VOC、ホルムアルデヒド、臭気、Aその他のガス成分)、(3)生物学的要因
B.それ以外の住環境危険要因
(1)物理的要因(音、騒音・振動、照明、建築学的設計)、(2)化学的要因(農薬・殺虫剤)、(3)心理的要因
IAQを主要な危険因子としたのは、シックビルデイング症候群の歴史的な経緯と、欧米ではIAQは別格扱いで研究されており、人体への影響が大きいことを重視したことによる。室内空気汚染物質(Indoor
Air Pollutants)は、一時的な汚染ではなく、常時、あるいは長時間に渡り室内空気を汚染する、ガス状物質、粒子状物質(粒径10μm以下)、浮遊微生物のことを指す。
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